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＜再び池田家同族の争い＞
さて、池田勝正追放後の池田家のその後に戻ります。代わって、池田四人衆の残存に荒木村重を加えた三名での合議制による新体制を打ち出した池田家では、三好氏の勢力下であったために、その直後から敵対勢力に厳しく監視されるようになります。
　早速幕府は、和田惟政・三淵藤英・細川藤孝らを池田城周辺に出兵させ異変に備えます。
　間もなく、池田家の内訌に呼応して三好氏の軍勢が阿波国から兵庫津に上陸します。一軍は、摂津国欠郡野田・福島方面を目指していたらしくその途上にある反勢力の伊丹氏を牽制しました。
　1570(元亀元)年8月13日、尼崎の猪名寺付近であった合戦はそのためのもので、三好三人衆方安宅信康勢が、幕府・織田信長方の伊丹忠親の伊丹城を攻めようと尼崎から北上。更に、三人衆方池田勢もこれに呼応して池田から南下。
　この時、同じ幕府方として池田勝正も伊丹城内に居たようで、三人衆勢を迎え撃つために忠親とともに百騎程で出陣した模様。
　この合戦で、三人衆勢は後退しますが、双方に死傷者を出して、忠親方に三・四名の戦死者を出しています。
　同月25日、池田家と関係の深い、摂津国原田城内で、また、内訌が起き、城等を焼いて家臣が分裂してしまいます。個人的推定ではありますが、伊丹から東への連絡路確保のための要地である原田地域は、池田勝正が主導的に政治的・軍事的策動を行ったと考えています。
　また、これにより三人衆方池田衆は、南へ動けなくなって、野田・福島方面との連絡が取れず、分断される形となりました。
　幕府・織田信長方は、この予想外の苦境を挽回するために、将軍義昭が幕府衆細川右馬頭藤賢の守る摂津国欠郡中嶋の堀城へ出陣し、諸将の士気を鼓舞します。この日は、諸説ありますが、9月4日までには堀(中嶋)城へ入っていたようです。この時将軍義昭は、二千程の兵を率いていたようです。
　間もなく、この一連の行動は功を奏し、三人衆方は次第に形勢不利となり、遂に降るかと思われる程に追い込まれていました。
　しかし、その時、三人衆方として大坂石山本願寺が、幕府・信長方に対して蜂起します。形勢は一気に逆転し、状況不利と見た幕府・信長方はすぐに撤退をはじめます。
　この本願寺の蜂起は、事前に打ち合わされたもので、広範囲に行われました。近江や丹波で、反幕府・信長の気勢が上がり、兵庫にも三人衆方の新手が上陸しました。
　10月、河内国の南の要所である高屋城内で、畠山家でも内訌が起り、守護である高政が追放されます。これは、高政が三人衆方に加担した事が発覚したために起きた内訌のようです。高屋城では、高政に代わって弟の昭高が当主となり、幕府・信長方としてこの後も活動しています。
　この頃、池田勝正は、摂津国原田城に入っていたと思われます。三好三人衆方の大攻勢に備え、伊丹忠親などとも連係して、防御にあたっていたようです。
　10月下旬には、京都方面で三人衆方の浅井・朝倉勢が攻勢を強めて、幕府・信長勢と交戦に及んでいました。これに呼応して、三人衆方池田勢は、池田から東の周辺諸城を攻めているようです。この時、中川清秀が中心となって諸勢を率いて出陣したと中川御年譜にあります。
　12月に一旦、幕府・信長方と三好三人衆方は、和睦を行いますが、翌年（元亀2）5月には破れて、再び交戦状態となっています。
　勢力を拡大した三人衆方池田勢を封じるため、三方向からこれを攻撃する事となったようです。まず、幕府・信長方で高槻城の和田惟政が、安威城を攻め落とします。続いて6月10日、惟政は吹田城を落とします。
　そして7月には惟政の援軍として幕府衆三淵藤英・細川藤孝が高槻方面へ入り、間もなく藤孝は池田勝正と合同で、三人衆方の池田城を攻めています。勝正・藤孝勢は、池田の市場等を放火したりして、強行的に数日間攻めたようですが、結局は落とす事ができず、8月2日に後退しています。
　藤孝は、京都（居城の勝竜寺城を経由したと思われる）へ戻り、勝正は原田城に戻っています。